夏目漱石と森鴎外の家紋


明治の文豪、森鴎外の本名は森林太郎。
島根県津和野町生まれで、家は代々津和野藩の藩医だった。
この森家の家紋は柏である。

しかし、そんじょそこらにある柏紋とはまるで違う。
名付けて「乱れ追い重ね九枚柏」という。

具体的に説明すると、九枚の柏の葉が乱雑に重なりあっている紋形だ。
普通の紋のように左右シンメトリックな美しさなどは最初から放棄しているような紋である。

現在の森家でも、この家紋の由来は分からないそうだ。
天下の珍紋の一つに挙げられるだろう。

柏は元来が神木である。
古代はこの葉に食物を盛り、神に供えた。

一方、苗字の森は神域を表している。
したがって森の苗字に柏紋はまことに似合いの組み合わせといえないこともない。


もう一人の文豪、夏目漱石の本名は金之助という。

その祖は信州夏目庄の地頭で、子孫が徳川氏に仕えた。
家康が信玄に惨敗三方ケ原の合戦では夏目吉信が家康の身替わりになって討ち死にしている。

旗本の夏目家の門前には家紋の「井桁に菊」の紋を据えていたので、そこを菊井町(現在の新宿区喜久井町)といった。
そこが漱石の生地である。

近くに夏目坂という地名も現存する、「井桁に菊」の紋は本来は「籬架菊(ませきく)」といい木や竹を組んだ垣根に菊を植えた風流な紋である。

もとは写実的な紋だったが、しだいに図案化されていって、夏目家の紋のように、井桁の中に菊の花を配した簡単なものも「籬架菊」と称するようになっていったのである。

森鴎外家の紋と同じく珍紋の部類に入れられる。



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